蓄熱 |
蓄熱とは
蓄熱は、物体の温度を1℃上げるの為に必要な熱量のことで、その物質がどれくらいの熱を貯め込むことで蓄熱が出来るのかということです。この熱容量が小さいと蓄熱しきれなかった熱が室内に漏れ出してしまいます。これがオーバーヒートと言います。蓄熱とは、室内温度が外気温度などに左右されにくくし室温の安定化を図ると共に、日射取得型の設計手法(パッシブソーラー設計)には欠かせない基本要素と言えます。イメージとしては熱をしまう(ためる)ことの出来る熱タンクというと分かりやすいかもしれません。
なぜ蓄熱が必要なのか
住宅の省エネ化とは、『①高断熱・高気密化 ②高効率設備の導入 ③冬季の日射を多く得られる設計』などと言われます。しかし、高断熱・高気密の住宅で日射取得量を大きくしてしまうと、単にオーバーヒートしてしまい不快な温熱環境となってしまいます。熱容量という考え方を持たない日本の住宅では、「暑くなりやすく、寒くなりやすい」住宅と言え、快適な住環境を考えると「暑くなりにくく、寒くなりにくい」住宅をどのように造るのかを知る必要があります。
主な材料の容積比熱と有効厚さ
熱容量は次式で求められます。
[熱容量(kJ/℃)=蓄熱部位の容積(m3)×蓄熱材の容積比熱(kJ/m3・℃)]
容積比熱が大きいほど熱を蓄える効果が上がります。有効厚さを超えても、その部分の蓄熱効果はあまり見込めません。また、床・壁・天井などに蓄熱効果のある熱容量の大きい材料を使用する場合、 蓄熱部位に120(kJ/℃・m2)以上の熱容量の増加が見込まれる材料を使用すること。
※材料には蓄熱部位として計上できる「有効厚さ」が設定されています。材料の容積算定時において、材料の厚さが有効厚さ以上の場合は、有効厚さまでのみを計上することができます。これは、有効厚さ以上の材料の蓄熱効果は小さいことを意味しています。熱が伝わりやすい材料ほど、有効厚さは大きくなります。
協会がおすすめする蓄熱材
潜熱蓄熱材
スミターマル/住化プラステック株式会社
パッシブ蓄熱材(スミターマル)とは
パッシブ蓄熱材とは、「硫酸ナトリウム10水塩」をポリプロピレン容器に充填した潜熱蓄熱材です。この蓄熱材を壁や床下に入れることで簡単に熱容量を確保することが出来ます。“蓄熱”は、お部屋の温度を快適に保つ為に重要な役割を果たします。[標準270×845×9mm:125 kJ/枚]
パッシブ蓄熱材は、お部屋を快適な温度に保つのに最適な特性を実現するよう、融解と凝固の温度を調整した蓄熱材です。暖房や昼間の日差し、日常生活で発生する熱で暖められると25℃で融解し、お部屋の温度の上がりすぎを抑えて熱を蓄えます。
お部屋の温度が冷えてくると19℃で固体に戻りますが、その時に大きな凝固熱を発生させます。このように20℃前後で蓄熱・放熱して急激な温度の変化を抑えるので、夏場も熱くなり過ぎずに快適に保ちます。
小さな容積で大きな熱容量!「硫酸ナトリウム10水塩」
「硫酸ナトリウム10水塩」は、1kgあたり82kJという大きな熱容量を持っており、同じ容積のコンクリートや砕石と比較してみると約5.5倍以上の熱量が蓄えることができます。この大きな熱容量が蓄えた熱を長時間に渡って放出し、お部屋の温度を快適に保つことを可能とします。また、水やコンクリートなどを蓄熱材とした場合は、放熱にしたがって蓄熱材自体の温度が下がりますが、凝固熱を利用したパッシブ蓄熱は長時間一定の温度を保って放熱しつづけます。これも安定した保温効果を支える大きな技術です。また、国が示す住宅の熱容量は170kJ/㎡と言われています。このパッシブ蓄熱材は、小さな容積で熱利用効率を向上させる為に大変有効な材料です。
導入事例
製品仕様
品番 | 25P9BX | 25P20BX | |
形状 | ポリプロピレン製中空容器 | ||
寸法 | 270×845×9 | 250×600×20 | |
充填量 | 1.52 kg/枚 | 3.11 kg/枚 | |
総重量 | 2.22 kg/枚 | 3.70 kg/枚 | |
物性 | 主成分 | 硫酸ナトリウム・10水塩 | |
融解温度 | 25℃ | ||
凝固温度 | 19℃ | ||
蓄熱容量 | 125 kJ/枚 | 214 kJ/枚 |
※2014年度 経済産業省 ネット・ゼロエネルギー・ハウス支援事業 ゼロエネ補助金で 『プラスワンシステム』として採択されている蓄熱材です。(P.V.ソーラーハウス協会の申請商品)
P.V.ソーラーハウス協会の導入技術『蓄熱』のご紹介はこちら!
基本は、1F土間コンクリート+タイルとし、熱容量の大きな硫酸ナトリウム10水塩と、水(伝導率が良く、比熱容積が大きくコストが圧倒的に安い)を活用しました。特に水はコスト面やメンテナンス面からペットボトル(2L)の水を活用し、全体コスト9万円程度で97,440 kJの熱容量を確保した。
・日射取得ゾーン:黒タイル+土間コンクリート+29度潜熱蓄熱
・水蓄熱(ウォータータンク)約2,300L
・1F廊下部:ヒートポンプ式温水床暖房+土間床+32度潜熱蓄熱
・打ち合わせ室:壁に25度潜熱蓄熱
・1㎡あたりの熱容量766.30kJ
昼間に日射取得し水に蓄熱。夜間などの室温低下に応じて水に蓄えられた熱が放熱される。(水とウーロン茶で実験)
P.V.ソーラーハウス協会の事務所『蓄熱の温熱環境の実証実験』