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【会員対象】LCCM住宅&パッシブ設計社屋 夏の住環境体感会 開催報告

7月19日(水)、20日(木)の2日間にわたり、『LCCM住宅&パッシブ設計社屋 夏の住環境体感会』を茨城にて開催いたしました。

今回のイベントでは、つくば市の(国研)建築研究所内LCCM住宅デモンストレーション棟と、龍ケ崎市のP.V.ソーラーハウス協会本部事務所を“体感”いただきました。温熱環境を肌で感じながら、熱画像カメラで温度分布を視覚的に理解いただいた上でポイントの解説を行うことで、快適な住環境をつくるためのノウハウを知識として学ぶだけではなく、肌で感じていただくことができたのではないかと思います。

関東近郊を中心に、遠方からは沖縄、熊本、愛媛の会員企業様にもご参加いただき、温暖地・蒸暑地の方々の関心の高さが感じられました。

今回の体感会のポイント

LCCM住宅の体感

LCCM住宅は、建設時の資材運搬等から運用時、建物の廃棄時まで含め、建設時、運用時、廃棄時において、できるだけの省CO2に取り組み、さらに太陽光発電や太陽熱などを利用した再生可能エネルギーの創出により、住宅建設時のCO2排出量も含め生涯でのCO2の収支をマイナスにする住宅です。

今回のLCCM住宅見学会は5年ぶりの夏開催ということもあり、100名を超える参加者が来場し、注目度の高さを感じられました。

 

LCCM住宅は国が示している、日本が目指す住宅の最終形として、多くの研究者が開発に携わり、多様な技術が導入されています。では、その快適性は…?当日は外気温が28℃を超える中での見学会となり、LCCM住宅の夏場の居住環境を体感いただけたのではないでしょうか。

 

夏場の快適性を向上させるためには…

①外部環境を整える

躯体の計画以前に、外部環境の工夫によっても建物内部に侵入する熱を減らすことができます。

建物の周りを植栽で囲う(右図参照)、外壁色に反射率の高い=白に近い色を採用する等の工夫で躯体外側の温度上昇が緩和されます。

事務所南側の外構
建物の周りを芝で囲うことにより、建物外部の温度上昇を抑える工夫。芝の表面は32℃程度であるのに対し、砂利面の温度は40℃を超える。

 

 

②建物内部に入り込む熱をコントロールする

夏型の住宅の快適性を考える上で、重要となるポイントが「建物内部に入り込む熱をコントロールする」ことです。住宅内部に熱が侵入する経路は「外皮=断熱部」と「開口部=窓」と、大きく二分されます。断熱部に関しては必要最低限の断熱厚があれば、過度な断熱をしなくても十分に熱の侵入を抑えることができます。従って、熱のコントロールでは「窓」のコントロールが重要になります。

下のグラフは、自立循環型住宅の標準モデルプランにおいて、各部位からどの程度の熱が侵入するのかをシミュレーションした結果となります。

<計算条件>

・5地域(龍ケ崎)
・木造2階建て
・1階床面積:67.90㎡(20.50坪)
・2階床面積:52.18㎡(15.75坪)
・延床面積:120.08㎡(36.25坪)
・窓面積:南 18.96㎡ 北 3.74㎡ 東 3.15㎡ 西 2.07㎡ 合計 29.90㎡

①無断熱・アルミ単板の場合
天井面から大量の日射熱が侵入していることがわかります。壁面4方位から入ってくる熱量、窓面4方位から入ってくる熱量をそれぞれ合計しても、天井から侵入する熱の半分にも届きません。
住宅全体の日射熱取得量:44.99
②天井:HGW16K 200mm、壁:HGW16K 140mm、アルミ単板サッシの場合
天井と壁をP.V.ソーラーハウス協会本部事務所と同じ断熱仕様に変更。決して極度な断熱はしていませんが、天井面・壁面からの熱侵入が大幅に削減できます。
住宅全体の日射熱取得量:10.92
③天井:HGW16K 200mm、壁:HGW16K 140mm、南 樹脂ペア・東西北 樹脂ペアLow-Eの場合
天井と壁に加え、サッシも事務所と同じ仕様に変更。
窓から入る日射熱は多少減少しましたが、住宅全体で見るとまだまだ大量の熱が窓から入ってくることがわかります。
住宅全体の日射熱取得量:7.70
④③の仕様+全方位窓に外部日射遮蔽スクリーン追加した場合
全方位の窓に外部日射遮蔽スクリーンをつけると、窓からの日射は劇的に減少しました。
住宅全体の日射熱取得量:2.71
⑤④の仕様+全方位窓にハニカムaSsu45mmW採光を追加した場合
ハニカム構造断熱ブラインドにより、さらに窓からの日射熱取得量が大幅に減少します。
住宅全体の日射熱取得量:1.62

 

内付けブラインドはルール上外皮計算に含めることができませんが、上記のように実際の日射遮蔽に効果的であることはもちろん、今回は触れていませんが、その高い断熱性もあいまって快適性の向上にも貢献します。

イベントの中では
・断熱の効いた建物と無断熱の建物で、建物内部から天井面を熱画像カメラで撮影し、実際に天井面の温度が何℃まで達しているのか=どれほどの熱量が天井面から侵入しているのか
・遮蔽物の日射遮蔽効果を熱画像カメラで撮影、遮蔽物の有無により窓表面温度にどれほどの変化が生じるのか
等を見学いただきました。

③空調による効率的な温度・湿度コントロール

P.V.ソーラーハウス協会の社屋はパッシブソーラー設計の要素を多分に取り入れており、真夏でも4kWのエアコン3台で延床面積127坪の全館冷房を実現しています。

建物概要

・建築面積:228.36㎡(68.94坪)
・1階床面積:223.58㎡(67.49坪)
・2階床面積:198.83㎡(60.02坪)
・延床面積:422.41㎡(127.52坪)
・構造:2×6構造
・熱損失係数(Q値):0.99W/㎡K 自然温度差:13.76℃(QPEXより試算)
・断熱仕様:壁 HGW16K(140mm)、屋根 HGW16K(200mm)、基礎 ビーズフォーム特号(60mm)
窓 樹脂サッシペアガラス(南)、南以外樹脂サッシAr Low-Eガラス(空気層16mm)
ハニカム構造・断熱ブラインド、換気 第一種熱交換換気(スティーベル)

小さい容量のエアコンで全館冷房を実現するためには、断熱・気密が重要であることはもちろん、空調の設置位置や運転方法にも工夫が必要です。

左の画像は個人宅の階段を2階から撮影した熱画像です。
階間部で温度帯がはっきりと分かれている様子をみることができます。

この物件は無断熱住宅で、撮影時は1階リビングで冷房が稼働しており、2階は無冷房状態でした。暖かい空気は上に、冷たい空気は下に流れていきます。画像のように、エアコンが吹き出す冷気は、通常エアコンの設置値より上には届きません。

 

 

P.V.ソーラーハウス協会本部社屋では、開口部の日射侵入を徹底的に遮蔽し、室内温度上昇を抑制しています。その条件を前提に、2階に設置している4kWのエアコン3台で24時間連続運転を行なっています。上向きに風を送るシーリングファンと組み合わせてフロア全体に冷気が行き渡るようにし、また連続運転による湿度コントロールを同時に行ない、常時20名程が働くオフィス全体の快適性を保っています。イベントに参加いただいた皆様には、社屋の温熱環境について肌で感じていただけたことと思います。

 

通風の検討

通常は4kWのエアコン3台で24時間冷房を行っている社屋ですが、実験のためにすべての冷房とシーリングファンを19時ごろから停止させ、室温を上昇させた環境をつくります。

熱気のたまった状態で、1階の地窓と2階の頂側窓を開けると…?

社屋の設計は通風計画が考慮されているため、1階の地窓からは冷気が入り、2階の頂側窓から暖気が抜けていくのと同時に、実は2階の頂側窓から冷気が降りてきます。見学いただいた皆様には、地窓から頂側窓へ空気が流れる気流感(通風)を体感するとともに、白い布を使用し、頂側窓から降りてくる冷気を体感いただきました。

そして通風モードとした状態で一晩経過した社屋の温熱環境は…?
パッシブ設計における通風の効果について、体感していただくとともに、その有用性について考えていただきました。

 

イベントの様子

<パッシブソーラー設計社屋・昼の見学> 11:00~ 天気:曇時々晴 気温:28.0℃

昼の見学ではまず事務所外部にて、夏場の外部環境をご覧いただきました。曇天でも砂利やアスファルトがどれほどの熱を持つ=外部の熱源となり得るのか、芝による温度上昇抑制効果はどの程度なのか、また、外壁の色によって表面温度にどれほどの差が出るのか、熱画像でご覧いただき解説をいたしました。

 

 

 

<LCCM住宅デモンストレーション棟見学会> 14:00~ 天気:晴れ 気温:28.7℃

イベント当日はあいにくの曇り空でしたが、見学会の最中には日差しが出て、夏らしい気候での見学会となりました。最初に展示館にてLCCM住宅の建設の経緯等について説明を受けた後、LCCM住宅を見学いたしました。

見学風景の写真です。当日は、見学会全体で100名を超える申し込みがあったそうで、P.V.ソーラーハウス協会だけでもスタッフと会員企業様含め、20名を超える大所帯での見学となりました。

当日は夏の通風モードでのLCCM住宅を見学しました。ルーバーで日射遮蔽を行いつつ、気圧差を利用したパッシブ換気を採用しています。 LCCM住宅研究・開発委員会の桑沢さんに、LCCM住宅に導入されている設計技術等についてご説明いただきました。

 

<夏を快適にする設計セミナー> 17:00~

日本の蒸暑地域の代表である沖縄の住宅を例に、夏の住宅ではどんな現象が起こる可能性があるのか、その現象に対してどのような設計手法・設備で対処するべきかについて、セミナーを行いました。

住宅の日射取得シミュレーションソフトを用いて、一定のモデルプラン上において断熱の厚さ、開口部のガラスの種類、遮蔽物の有無を変化させると、住宅への熱侵入がどのように変化するのかを視覚的に理解いただき、夏型の住宅を考えたときにどのような対策が必要となるのか解説いたしました。

沖縄の実物件で撮影した熱画像等もご紹介しながら、夏型住宅の設計と住まい方について考えていただきました。

 

<懇親会> 19:30~

セミナー終了後は、事務所内の案内を行ったのち、先ほどセミナーを行った研修室にて懇親会を行いました。

地元で有名な料理やワインで会員企業様をおもてなしさせていただきいたのですが、中でも特産の落花生は好評だったようです!

懇親会の最中にもちょっとした実験を取り入れ、親睦を深めつつ夏型住宅の設計について理解を深めていただけたのではないかと思います。

 

<パッシブソーラー設計社屋・夜の見学> 22:30~ 天気:曇 気温:23.0℃


夜の見学では、通風を体感する実験を行いました。頂側窓から降りてくる冷気を体感していただくために、頂側窓下に白いシーツを取り付け、シーツをつたって下がる冷気を感じていただきました。

 

<パッシブソーラー設計社屋・朝の見学> 翌7:30~ 天気:晴れ 気温:25.6℃

19日(水)に関東の梅雨明けが発表され、翌朝は前日とは一転、青空が広がりました。

朝の見学では、まず一晩通風モード(空調設備停止)とした社屋の温熱環境を体感いただいた後、前日にはご覧いただけなかった日射がある状態でのハニカムブラインドと外部日射遮蔽スクリーンの日射遮蔽効果の熱画像での検証、無断熱倉庫内の天井面の温度分布、外構や太陽熱給湯設備を見て回ったのち、イベントは終了となりました。

 

 

1日半という短い時間でしたが、イベント終了後に「大変勉強になりました!」とのお声もいただき、参加された皆様にはしっかりと夏型住宅の設計ノウハウや最新のエコ建材についての情報をお持ち帰りいただけたのではないかと思います。

ご参加して頂きました皆様、ありがとうございました。